プル

始まりの雨、終わりの雪

雪が降るとさまざまな声が飛び交います、「やったー!遊ぼう!」、「綺麗」、「通勤大丈夫かな。。」
私にとって降り始めの雪はあの出来事を思い出させます。

彼女と出会ったのは友人数人とイベント会場で遊んでいるところでした。
雨がパラついてきたので雨宿りしたときにふらりと現れた彼女。
好きな作品の話題がびっくりするほど合い、気がつくと彼女も仲間の輪に入っていました。
屈託なく話す笑顔が好きで、時間を忘れて色々なことを語り合い気づけば恋に落ちていました。
私はそのとき地方に、彼女は都内に住んでいたので少しでも時間を作るために必死でバイトして電車代を作っていました。
学生だった身分のため、学校が終わったらすぐ遅くまでバイト、時には掛け持ちをして深夜遅くまで働いていました。
それでも彼女と少しでも会うためだったので苦には感じていませんでした。

そんな中、親御さんの体調がすぐれないとのことで実家に戻る話を聞き、なんとなく少しでも傍にいてあげようと思い、
学校が終わってすぐ電車に飛び乗り都内の夜行バスの停留所に見送りに行きました。
わざわざ見送りだけに来るとは思っていなかったらしくとても驚き、でもほっとした顔をしていたのを覚えています。
たわいもない話をしてバスの発車の時間になった時、彼女が乗り込むところで告白されました。

それからは今までにも増して連絡を取り合い、頻繁に会いに行きました。
それまでまともに恋愛をしたことがなかったため、これほどまでに大事な人の存在が大きいこと、
愛されるということ、必要されることの喜びを感じたことはありませんでした。
この人とずっと一緒にいれたらいいと思いました、極力彼女との時間を作り彼女と一緒にいました。

しかし、彼女を優先させるあまりそれ以外のものがおろそかになってしまいました。
バイトに力を入れすぎて単位が取れない状況になり、それまで付き合っていた友人たちも付き合いが悪いと心象を悪くしてしまったり。
それでも彼女がいればと盲目になってしまっていました、もちろんそんな状態でうまくいくはずがありません。
都内での就職口を探すも単位が足りず卒業見込みがないものに就職口が見つかるはずがありません。
うまくいかないことを友人に愚痴っているうちに、心象の悪さも加わり悪い噂が流れ、彼女の耳にもより悪く伝わり彼女からの心象も悪くなりました。
何をしてもうまくいかない、誰も助けてくれない、彼女も徐々に冷たくなり、次第に無表情で機械的に会話する日々になりました。
それでも連絡を取ったり会ったりしていましたが、友人など他の人がいる場では笑う彼女、二人きりになると人形のように無表情になることに憤りを感じ、次第にストレス性の逆流性食道炎になってしまいました。

どうも私の悪評はとどまることを知らず、しれを精神病とレッテルを張られ、彼女と別れさせて新しい人をくっつけようという話も持ち上がっていました。
当時はみんなで遊び行った際も、私から離れ知らない男とくっついて歩いている状況にコレは何の茶番だろうかと呆れを通り越して笑っていました。
ここまでくると彼女も何かと「もう別れて」というようになりました、しかし最後の最後まで信じ続けて拒否を続けていました。
そんな中、私抜きで友人たちと彼女で旅行の話が持ち上がり、決行されていました。
楽しそうにしている旅行中の彼女の写真を見て、何ヶ月ぶりにこんな顔を見ただろうと思うと同時に、
もう私にはこういう顔をさせてあげられないんだなと絶望しました。

それを実感してしまった夜、彼女に連絡をして会いに行きました、これで最後にしよう、お互いこのままではよくない。
車を飛ばし高速で彼女の家の前へ、その日はバイトがあったのでバイトが終わって帰ってきたら別れを告げて帰ろうと。
家の前に着いたから待ってるとメールをすると、「この後バイトの人とカラオケいく約束だったんだけど。。」と返事。
元からの約束なら仕方がないと、終わるまで待ってるよとだけ返信して待つ。

返事をしてから1時間、2時間、3時間と経過して終電の時間、それでも彼女は帰ってこない。。
終電逃したのかな。。と思っていると「今日のカラオケオールだから。」とメール。
完全に彼女は私を避けていた、関係を修復するのは不可能だった。
それでも最後だからと自分を落ち着かせつつ、終わるまで待ってるよとだけメールを送信した。

気がつけばフロントガラスに雨音を感じました。
季節は冬、暖房をかけているとはいえ、隙間から少しずつ入る冷気に身をよじりながら彼女を待つ。
途中自分の行動を省みて、何をやってるんだろうと空しさでいっぱいでした。

始発も動き出し、日も昇って朝のワイドショーが始まるあたりに彼女の姿が目に映りました。
家を飛び出してから12時間以上も経過しましたが、怒る感情よりも安堵の気持ちのほうが強かったです。
運転席の横に立つ彼女を助手席へ促しましたが彼女は頑なに拒否しました。
「昨日から待ち続けてる危ないやつ」「何されるかわからないから二人きりであわないほうがいい」
バイト先の人たちからもそういわれたからと彼女の口から聞かされるのを他人事のように聞いていました。
彼女の目は明らかに怯えの感情が映っていました。
ちょっと前まではあんなに笑顔をみせてくれたのに、好きでいてくれていたのに、今は嫌悪や怯えなど負の気持ちがこもった目でみられるのか。。

しかしこの冬空の中外にだしているわけにもいかなかったので、運転席に座らせ私は外に出ました。
予想したよりも外は寒く、こんな中に彼女を立たせずに良かったと思った自分はやっぱり彼女とを好きで仕方がないんだと思いました。

そして彼女に対して自分の今までの気持ち、今の気持ち、これからを伝えました。
彼女の今の行動、私に対しての気持ちを見る限りこれ以上私が傍にいようとしても傷つけるだけ、私もこれ以上傷つくのもいやでした。
搾り出すように「もう、消えるから。別れよう。」と告げました。
聞いた瞬間「えっ?」とつぶやく彼女、その言葉がでるとは思っていなかったようです。
「もう会わないって事?」という彼女に対して初めて「そんな危ないと思ってるやつと会えるのかよ!」と怒鳴りました。

物言いたげな彼女を尻目に彼女を車から降ろし帰路につきました。
雨振る外環を走る中、終わったという喪失感に加えて、車中で夜明かしをしたことの疲労感の中、
数千ストックのある楽曲でランダム再生していたオーディオからGacktの「Last song」が流れました。
「。。終わっちゃったなぁ」とつぶやいたと同時にサビの歌詞

「降り続く悲しみは真っ白な雪に変わる」

が流れたと同時にそれまで振っていた雨が突如雪に変わりました。
「ドラマかよ。。」とつぶやきながら初めて涙を流しました。


あれから数年、色々な経験をしました。
彼女があれからどうなったかはわかりません。
社交的な彼女の事だから、今頃はいい人と結婚してるかもしれませんし、夢みていたことを実現しているかもしれません。
当時の私自身がとても未熟ゆえ、もう少し上手く立ち回れていればあるいは違う未来があったかもしれません。

しかし現在は私も新しい人生を生きていますし、今の私に後悔はありません。
あの時の経験があったからこその今であり、今の自分に満足していますし、幸せに過ごしています。
彼女にも私との日々が少しでも糧になっていればそれでいいも思います。

もう会えない彼女ですが、この空のどこかの下でくれぐれも健やかに幸せでいることを願います。
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始まりの雨、終わりの雪」への2件のメッセージ

  1. カイト

    すごく共感できました。。。
    僕もいろんなところで、きっと同じような行動に出たと思います。
    男ってなんで最後まで少しカッコつけようとするんでしょうね。
    やっぱり美しかった思い出を汚したくないものですよね。

    でも別れ際の女性のほうが警戒するのもわかります。
    自分の身を守るために取るべき行動だとも思います。
    そして男が最後にしてあげられることは相手を無事に返すことですよね。

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